外食よりも美味しいごはんって大変じゃない?
おうちごはんの美味しさにこだわっていると、そんなふうに言われることもある。
でも、これはファッションや家具などに対して「オシャレな状態をキープするの大変じゃない?」と言っていることに近い気がする。
そりゃあ、ファッションやインテリアも、かっこいい雰囲気を保つためとか、料理も美しさやレストランっぽさを重視するという考えだったら、当然疲れるだろう。
「ファッションも家具も好きなものしか着たくないし置きたくない」という発想と同じように、わたしたちの場合も、誰かに見せるために料理をしているのではなく、自分たちの満足のためにやっているし、毎日の食を通して家族間の仲が育まれていることを日々体感している。
今回は、料理をただ凝り性など、趣味の視点でとらえるのではなく、心身ともに安定した状態を保つために、幸せな食卓をつくる上で必要な「いかに美味しく食べるか」という会話の大切さの話をしようと思う。
「美味しいものを一緒に食べたい」という気持ちが、前回よりも感動する家の食卓をつくる
同棲をするタイミングで引っ越しをした都心から少し離れたこの場所には、徒歩圏内で行ける「美味しいお店」がほとんどなかった。
そうなれば、普段の食事は自炊がメインになり、「何を食べようか?」という会話が生まれ、たとえ簡単な料理にする日でも、一人よりもちゃんと作ろうという気になる。
実際、わたしたち夫婦も、家で食べる時間が増えれば増えるほど、「この間、あのお店で食べた料理、家で食べたいよね」「前回よりも、もっと好みの味にしたい」と思う変化が訪れたし、結婚後も夫は自炊が慣れないわたしに、食をちゃんと楽しむことがいかに大切か、何度も行動で示してくれた。
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我が家ではもともと一人暮らしでの自炊歴が長かった夫が日々の料理をリードしてくれている。
そんな彼の料理の腕が、いっしょに暮らし始めてからさらに一気に上がっていったのは、身体によくても、美味しいと感じなかったら意味がないという考えから、「二人が美味しいと思うものを食べたい」という気持ちを重視するようになったことが大きい。
料理は、割り切れば割り切っただけ、心から美味しいと感じられる時間は減っていく。
「時短料理しか作らない」と決めつけたり「家と外の料理は違うよね」「料理は自分だけの役割」と固定観念をもったとたんに、「こんなものだ」と、今以上の味を求めなくなる。
でも、日頃から「どんな味が食べたくて、どんな気分か」家族や身近な人と会話をしていると、「家でアレンジしたらどうできるかな?」と意識的にもう一歩の工夫をするようになり、前回よりも感動する美味しさが手に入る。
親しい人とともにする食卓をつくるために一番必要なのは、そこに向かうまでの過程をいっしょに作り上げて、お互いに美味しい時間を共有する気持ちなのである。
食が満たされていれば身体と心は安定する
振り返ってみれば、そんな価値観は「食」に決して手を抜かない両親から教わったことでした。父も母もずっと仕事をしていましたが、僕達は食生活の面で十分満ち足りていたからか、両親から愛情をかけてもらっている安心感は常にありました。
僕がまだ小さいころは、近所の知り合いに時々、姉と僕を預ける日もありましたが、たいていは夕飯の用意をしてから出かけて行っていました。母が作る夕食はメーン料理のほかに、いつも少なくとも3種類の常備菜がありました。
僕達はご飯を炊いたり、たまに味噌汁を作ったりするだけでよかった。子ども達がしっかりと満足できる食事を、忙しいながらも用意してくれていたんです。
この話は料理家のお母さんの家だからという理由ばかりではない。
この話の中に「大好きな麻婆春雨を作ってくれているときはテンションが上がった」とある。
「好きな料理を用意してくれている」気持ちはダイレクトに伝わるし、「本当はいっしょに食べたい」と思いを込めて作った料理は、作り置きでも、子供にだって美味しい家の味として伝わり満たされる。
夫婦もどちらかの帰りが遅くなり食事がいっしょにできないなら、「この料理、いっしょに食べたいから今度の週末にどうかな?」といった会話をすれば、お互いの心は安定する。
料理を通して、大切にしたい価値観を伝えられているかどうか。
それが、幸せを感じられる毎日の食卓時間を過ごすために、オーガニックの健康食材など手段やものにこだわるよりも、一番必要なことではないだろうか。
家族の時間が深まる外食よりも美味しいリピート自炊メニュー10選
夫婦で美味しい時間にこだわって自分たちの好みに合うようにアレンジを繰り返してきた料理の数々は、それぞれに思い出がある。
今回は、リピートメニューをピックアップして、どんな会話をして工夫してきたか振り返ってみた。
1位 : 鯖丼
こちらはテレビ東京の国分太一さん&料理人の栗原心平さんが日曜お昼にやっている料理番組「男子ごはん」のレシピ。
実はリピートメニューの中でもとのレシピを基本崩していないのは鯖丼のみかもしれないくらい、何度も作っている定番メニュー。
焼いてほぐした鯖やひじき等といっしょに合わせた混ぜごはんにして、焼きサバを上にのせ、薬味をかけて、ポン酢をたらしていただく一品は、飽きがこない和食の美味しさ。
普段から番組をいっしょに観ていて、「これやってみようよ」「これは自分たちには合わないなぁ」と次の休日をイメージしする楽しい夫婦時間を育んできた思い出深い料理。
焼き鯖丼にまつわる記事はこちらより⇒自分の欲求を抑えて、料理をしていませんか?料理番組「男子ごはん」に学ぶ、ふたりでつくる食卓
2位 :ミートソース(ボロネーゼ、ラザニア)
ミートソースは、幼い頃から大好物で、特にミートソーススパゲティ、ボロネーゼは今も変わらず定期的に食べている料理。
夫はミートソースが特別に好物ではないけれど、わたしが最高に褒め称えるので繰り返し作ってくれている...!
濃厚でありながら外食とは違う優しい味で、たくさん作って冷凍するパターンに。
わたしたちは、ひき肉が固まらず、細かくなっている状態の方が好きだから、ひき肉に火をいれながら、ほどけるように練り練りしていき、あとは弱火でこつこつじっくり煮込むことが大事だそう。
写真1枚目のように、イタリアで買ってきた太めのパスタ「ピチ」との相性も抜群。
ラザニアにしたり、パンに乗せたり、いろんなバリエーションで楽しめる。
3位 : ハイナンチキンライス
シンガポールに10年暮らした記憶に残っている本場の味を夫婦でシェアしたいと、気に入っているお店にいっしょに食べに行ってから家でも作るようになったハイナンチキンライス。
夫もこの味に出会い、一気に好物になったので定番化している料理の一つだ。
家で作るときに重視しているのは、鶏のぷりぷり感とジャスミンライスへの鶏油(チーユ)の味の染み込ませ方と醤油・しょうが・チリソースの3種タレをちゃんと作ること。
詳細はこちらの記事へどうぞ⇒「シンガポールで10年暮らした妻に贈るハイナンチキンライスの再現レシピ」
4位:ひつまぶし with 鰻巻きとお吸い物
※錦糸卵は普段入れず、炊飯器のまま。
夫婦で大好きなうなぎ。わたしはミートソースに続いて、幼い頃から大好物。
でも、うなぎって高いですよね。
どうやって工夫したら、美味しくなるか...?を考えた結果、我が家ではお買い得なときや、お魚専門の魚類で国産にこだわらず、中国産のうなぎでも買い、まず身に付いているタレを水で洗い流すことに。
それは、うなぎも魚なので魚の臭みがタレにしみついていて不味くなっているから。
お店のうなぎのタレの味が美味しいのは、その場で絡めていることとうなぎのエキスがしっかり入っていることが理由。
でも、うなぎエキスを出そうにも、骨などが簡単に手に入るわけではない。かといって、それなしでは、砂糖・みりん・醤油の味だけになってただの照り焼きになってしまう...。
だから、付属のうなぎのエキスが入ったタレをベースに甘みなどが出過ぎないよう醤油など調味料で調整してタレをつくるようにするのが我が家のやり方。
もちろん、うなぎ自身もなるべく美味しくしたいので、酒蒸しをして、中をふっくらさせて、オーブンで表面をパリっとさせる。
まずは、わさびをつけてそのままのうなぎの味を堪能し、お吸い物も味わう。
堪能した後は、ひつまぶしにしてわさびを入れていただきます!
ひつまぶしの日は、必ず「鰻巻き」も夫へリクエスト。しそも挟むとより美味しい。
うなぎ好きにはたまらないラインナップ。
5位:ペペロンチーノ
ペペロンチーノは、いわゆるイタリアンレストランで出てくるよりも、より自分たちの好みの味に近づけている。
わたしはパスタの中で好きな方ではなかったのが、夫がペペロンチーノ好きで作ってもらったことをきっかけにはまった料理。
具材はそのときによって変わるけれど、スタンダードなべーコン以外に、先日は初めてコウナゴを使ってみたり、春キャベツやオクラをよく合わせている。
とうがらしは、にんにくといっしょに刻んでしまい、通常ちゃんとしたイタリアンではやらないだろう玉ねぎのみじん切りを入れるのが我が家のスタイル。
邪道かも知れないが、そうすると食べている途中で甘みが出て2度美味しさを楽しめる。
これは、ミュージシャンの夫が音大生の頃に、大学近くにあった家族向けの大衆イタリアンのお店に通っていたときの思い出の味に近いもの。
甘みやコク、日本人が何度も食べたくなる味になって、やみつきになる味。
6位: 麻婆豆腐
本格麻婆を作ることになった発端は結婚前のつきあっていた頃、わたしが料理教室で習った、なんちゃって家庭料理麻婆を作ったら冷戦になり、それ以来、家でのマーボーは調味料の課題を残して封印されていたのだけれど....。
二人:「(冷戦から1年後)最近そろそろ本当に美味しい麻婆作ってみたいよね。」
(夫へ前回のレシピを手渡す)
「豆腐と挽肉の唐辛子炒め」って書いてるじゃん。
たしかに全然マーボーしてなかったもん。笑
でもマーボーって言われた!あれ?マーボーって書いてるのは自分のメモ...?
まさか!とほかの中華のレシピを探してみる。
“牛肉とピーマンのオイスターソース炒め”
(メモ: チンジャオロース)
家ではここまでしかできないとかレッスン料範囲ではここまでとかあるんだろうけど、だまされたね。(ニヤリ)
ということで...。
現在は、料理の鉄人 陳健一さんレシピを参考に、家庭料理とはいえ花椒(かしょう)と豆鼓(トウチ)を入れるようにして、ちゃんと麻婆の味が出るようにしている。
これを入れると一気に本格麻婆になるのでおすすめ。
中華はやっぱりガスコンロで短時間で調理ができた方が美味しいけれど、IHの火力でも十分お店の味に仕上がってくれる。
7位:バルサミコソースのステーキ
特別な料理ではなくても、ステーキなどお肉料理は柔らかさを残して焼くことを前提として、とにかくソースの美味しさにこだわっているのが自分たちのスタイル。
中でも、一番出番の多いのがバルサミコソースだ。
今までは、リーズナブルなバルサミコ酢をがんばって煮詰めていたけれど、ハネムーンでイタリアに行った際に、熟成年数ごとにテイスティングをしてみたら、ワインと同じで寝かされた年月が長いほど旨味がまったく違い、浅いものは酸味が効いていることがはっきりわかった私たち。
でも、10年ものなど長く価格が高いものほどデザート寄りの甘みなので、料理に合わせるなら程よく酸味のあるもの(熟成5年くらい)がちょうど良かった。
美味しいバルサミコ酢をゲットすると、料理が簡単に美味しくなるので、できれば口に合う良いものを。
ステーキは、ソースの味を分けて食べるのも美味しくて楽しいけれど、やっぱりバルサミコソースに戻ってきてしまう。
8位:水炊き鍋
冬は多くなる鍋料理。
いろんな鍋料理の種類の中で、身体に沁み渡る美味しさを体感できるのが、家なのに本格鶏ガラ白濁スープの水炊き鍋。
鶏ガラからしっかりお出汁をとった白濁スープは真っ白な鶏パイタンに...。
ネギと少量の塩を入れスープをいただき、そのあと、鶏にポン酢をたらしたら言葉も出ない美味しさ。
夫は仕事で博多に行くことがあり、本物の味を覚えてからそれを再現しているそう。
秋冬には味噌鍋、もつ鍋、キムチ鍋、醤油鍋、豆乳鍋、塩ちゃんこ鍋など、いろんな鍋をやるけれど、その中で一番手間がかかるのが水炊き鍋。
とにかく、しっかりダシをとると、締めの雑炊なども含めて、ちょっと外食で食べるくらいのお鍋にお金を出す気がなくなる味を家で再現できる。
ポン酢はなるべく良いものを用意して。
9位:ポルチーニクリームソースリゾット
クリームソースのベシャメルソースを作るのがとても上手い夫。
ポルチーニクリームリゾットは、イタリアで買ってきた香り高いポルチーニ(イタリア仕入れじゃなくともカルディなどでもちろんOK)を濃~く出して...。
生クリームを入れなくても美味しくなるクリームは、牛乳を煮詰めると分離してカスカスになるのを避けるために、バターと小麦粉を混ぜてベシャメル風にすると分離しないというのがコツ。
10位:家で食べたくなるカレー
カレーはこれまでスープカレーを極めたり、外でインドカレーを食べるのが好きだったりと、いろいろとスパイスに凝ってきたという経緯があるものの、家のカレーはそういうこともなくスタンダード。
ルーは好みのものを2種など混ぜたりするけれど、スパイスは入れたり入れなかったり、そのときの気分。
それよりも、野菜やお肉のダシをしっかり出すことが美味しさのポイント。
たまねぎはあめ色になるまで炒めて、具材をしっかり煮込んだダシでカレーを作れば出来上がり。
そのときの状況で、お肉は鶏、牛、豚といろいろ。
保存はプレーンのカレーを作って冷凍しておいて、食べるときに野菜カレーにしてみたり、具を変えればさまざまなシチュエーションで楽しめる。
このほかにも、焼き魚や納豆などシンプルな和食の日ももちろんある。
でも、家だからと理由をつけて終わりにするのではなく、たとえ納豆でも、ほかの食材を混ぜてアレンジしてみたり、より美味しく食べられて飽きないようにする。
これは、どれだけ自分たちの好みをちゃんとわかっていて、味を知ろうとする努力をしているかだと思う。
たまに失敗はしても、美味しく食べようとする意識を忘れないでいたい。
自分たちの「美味しい」を見つけて、今よりもっと幸せな家の味を
本当は、彼と出会った頃は、そこまで家の料理を追求する必要があるのだろうか?と疑問もあった。
でも、手際よく、どんどん上達していく一方で、「料理はめんどうだし、作ること自体はあまり好きじゃない。ただ、いっしょに美味しいものが食べたいから」なのだと彼は話す。
だから、簡単に仕上げるときも、ものによって時間をかけるときでも、ひと手間美味しくなる工夫がされているので、わたしも料理をしていて味付けに困ったら、まずは夫に聞くようになった。
「これって何を足せば変わる?」と相談をして、もう少し美味しくしたい方向にしようとすると、必ず、わたしたちの好みに近づくことができる。
自分たちが、どうやったら食べやすいかを考えれば、その大きさに切ろうと思うし、どうやったら美味しいかを考えれば、味付けを好みに寄せられる。
料理は食べるだけでなく、親しい間柄の中で最も身近なコミュニケーションツールだ。
自分だけのアイデアでは、味もワンパターンになりがちになるけれど、お互いに満足できるメニューを話し合うと、いつもの味が新しい美味しさに毎回更新されていく。
「相手と自分の幸せな時間を過ごすこと」を思い浮かべて料理を作る。
それだけで、一人の発想よりも何倍も美味しい時間を楽しめて、大切な人と過ごす食卓時間の幸せ度は上がる。
「自分たちの美味しい」を求めて会話をすれば、忙しいと感じる日々の中でこそ、身体と心を満たしてくれるものになるはずだ。
Herbal Tea Blend
Documentary Gift のオリジナルブレンド
1日のからだのリズムを整える「1day Rhythm」ハーブティーはこちらよりどうぞ。
Furniture Gallery
もっと自分たちに合ったスタイルを。
これまで製作をしてきた手づくり家具のギャラリー(オーダー制の木工家具製品)はこちらよりどうぞ。
・植物療法士が生活のお供におすすめしたい、日本人であることを実感する「和食に合うハーブティー」
・自分の欲求を抑えて、料理をしていませんか?料理番組「男子ごはん」に学ぶ、ふたりでつくる食卓
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。