「これって、こんなに美味しかったんだ」
日々の食を通して、美味しさの発見をすると、もう一回食べたいなぁという気持ちになる。
コーヒーだって、あの豆は最高のバランスだったからまた買いに行こう、と思ったり、丁寧に淹れるとやっぱり味が違う!なんて思うものだ。
じゃあ、ハーブティーの場合はどうだろう?
たぶん、ほとんどの人が一番に頭に思い浮かぶ目的は「健康のために飲んでいる」という感覚で、味がはっきり記憶に残っているという人は少ないと思う。
それは、ハーブが嗜好だけを楽しむものではなく薬草だからだ。
嗜好品と薬の間にいるハーブは、どちらの使い方もできる万能な存在だけれど、料理みたいに自分でできるレシピがすぐに見つからない...。
ハーブティー専門店に行ってブレンドを探したり、作ってもらうんじゃなくて、自分でちゃちゃっと作ってみたいのに。
それは、わたしがハーブと出会った当初に感じていたこと。
美容も好きだけど完璧にケアをすることを求めているわけではない。やり方が少しわかって簡単にできればもっとマイペースに続けやすい。からだの変化ともゆるく向き合える。
だから、普段つくるハーブティーも、シンプルにいつものお茶をちょっと美味しくするイメージが自分のモノになった。
ハーブのことも、女性としてのからだのケアも、夫婦の暮らしも、全部楽しめる今だからわかることがある。
今日は、そんな簡単にできる美味しいブレンドづくりのコツのお話。
美味しいと思った味を優先して、効能はつけ足しを
ハーブには味以外の薬効が細かくあるので、さまざまな組み合わせのブレンドをつくるには専門家でないと難しいかもしれない。
数種類を混ぜればそれぞれの相乗効果も得られるのが魅力でもある。
でも、複雑な内容でなければ誰でもハーブティーブレンドは作れる。
それは、組み合わせてはいけないハーブは特にないからだ。
(※薬との飲み合わせはかかりつけの医師に確認を。)
わたしは、ブレンドをつくるときに一番必要なことは、美味しい味を知っていることだと思う。
「ハンバーグにはナツメグを入れると風味がUPするから欠かせない」
「味噌汁に昆布茶を入れるとお手軽に美味しくつくれる」
まさにこういう日々の料理の感覚と同じなのである。
やっぱり人間は、美味しいものを食べたら.‥...「あ、また作ってみよう!」 と思うでしょ?だからこそ続けられるわけで。
その分、味の記憶は蓄積されていく。
ハーブティーブレンドを飲んで、それが好きな味わいだったら、「爽やかさ」が良かったのか、「少し甘いかんじ」が良かったのかなど、まずはレシピの素材になる自分の好みの感覚を知っておこう。
これ!というほしい効能があるときは、味を優先して選んだハーブに入れたい効能のハーブをつけ足しするだけで基本的にブレンドはできあがるから。
好みのシングルハーブを知ろう。脇役だと思っていたハーブも味を深く知ったら主役になりました。
植物療法士をしていると自分がハーブティーを淹れることのほうが多く、中身もブレンドが基本だ。
それぞれのシングルハーブの味を知っているから味の想像ができ、多種多様なハーブは煮だす時間によっても味わいが変わってくる。
とはいえ、実際ハーブティーを飲んで心から美味しいと感じた経験の中に、実はシングルハーブティーも多い。
以前にあるカフェで隣のイタリアンの席があくのを待ちながらメニューにあったリンデンフラワーのハーブティーを頼んだときのこと。
最初は「このハーブを単体で出すんだなぁ」と思いながら頼んでみた。
リンデンの味は弱いので、わたしはほかのハーブと必ずブレンドをして飲んでいたからだ。
それなのに、とてもまろやで優しいながら深い味わいのティーに仕上がっていて、単品の美味しさにやられた。
リンデンのシングルティー、こんな深みのある味になるのか...。
よく考えたら、リンデンはヨーロッパでは、街並みの街路樹としてよく目にし、就寝前などリラックスした時間を過ごすためのハーブティーとして飲まれている、甘く穏やかな味わいと蜜のような香りがどんな人にも飲みやすいティー。
特に南仏で生産量が多いので、パリではシングルで置いているお店はきっと多いだろう。
ここのお店の人は、この美味しい味を知っているんだろうなぁ。とお茶の時間を楽しんでいると、ちょうど隣のイタリアンの席が空いた。
好みのハーブの味をちゃんとわかっていれば、そのハーブは好きなように自由に使える。
こんな体験談もあるので、せっかくなら、茶葉の量や置き時間を調整しして自分の好みの具合を知っておくといいと思う。
料理のように味を想像して、メインと矯味のハーブを選ぶことからスタート
料理をつくるときに味を決めるものってなんだろう?
塩、砂糖、しょうゆ、胡椒、みりん、お酢、だし...。味付けの調味料がいろいろと思い浮かぶ。
醤油系の味にするのか、甘辛にするのか、味の系統を考えて料理をしていくと思う。
ハーブの種類も、お茶系にするのか、すっきり系にするのか、フラワー系にするのかなど味の系統がわかれるし、単体でも十分にお茶として味わえるもの、無味に近いものとさまざまある。
メインとなる味のおすすめハーブ5種
そこで、まずは味の系統がはっきりしていて使いやすいハーブ5種をピックアップ。
西洋たんぽぽの根の部分をローストしたダンディライオンは濃く出すと妊婦さんのたんぽぽコーヒーとしても親しまれているノンカフェインティー。とても香ばしく、コーヒーとほうじ茶の間のような味わい。
置き時間は3分程度が一番程よく味わえる。
腸内環境を整えて、便秘解消などに役立つハーブ。
飲むサラダと呼ばれる南米原産のマテ茶は、焙煎しているローストタイプが甘みと香ばしさがあり、ほうじ茶と麦茶の間のような味わいで飲みやすい。
ミネラル、食物繊維が豊富で野菜不足のときなどパワーチャージしたいときにおすすめ。
身体中の血液浄化をしてくれるネトルは、ほのかに甘みがあり、ふんわりとした茶畑の香りが特徴。緑茶のような味わいがあるハーブ。アレルギーや貧血の改善に使われている。
ふわっと甘い花の香りが広がるカモミールは、リンゴのような風味がある味わい。
胃腸の調子を整えてくれ、穏やかなリラックス効果があるので眠る前のティーとしても人気。
南アフリカ原産のルイボスは、高い抗酸化作用がある不老長寿の健康茶として愛されているハーブ。
ストレートの紅茶と麦茶の間のような味わい。血行促進作用もあるので、冷え性などに。
ほかにも、酸味の代表的なハーブのハイビスカスやこの後に紹介する爽やか系のペパーミント、そして和ハーブだと、どくだみ茶やよもぎ茶も単体で楽しめる味わい。
最初はこういったシングルでも深い味わいのあるハーブを1つメインにして、多くてもトータル3種類までで合わせてみるのがおすすめ。
味の調整ができる矯味のハーブ3種
実はハーブの中には、味を調整してくれる矯味のハーブがある。
なんだか味がパッとしない、決まらないなぁというときに、最後に少し加えて調整するハーブで使いやすいのはこちらの3つ。
主成分がメントールのペパーミントは、すーっと抜ける爽快感・清涼感のある良い香りが特徴のとてもスタンダードなすっきり系のハーブなのでメインにも味の調整にも使いやすい万能ハーブ。
少量つまんでティーに混ぜるだけで、飲みにくかった味が飲みやすく、ぼんやりしていた味の締まりを良くしてくれる。
ほのかにレモンの香りがすることからレモンバーベナとも呼ばれるベルベーヌ。
同じようにレモンの香りがするレモングラスとの違いは、それに加えて花々の蜜を溶かし込んだような優しい甘さがあるところ。
少し多く入れても、ペパーミントのようなキリッとした味ではなく品のあるまるい柔らかさがあるので、どんなシーンにも使いやすい。
レモンと同じシトラールという香り成分を持つ爽やかなハーブで、ベルベーヌよりも香りや味がレモンに近く、特に香り成分が有効なのでタイ料理のトムヤムクンにも使われていたり、ヨーロッパのフィンガーボールに入っている。
量を入れても味が濃くなることはない、主張しない飲みやすさがある。
特に、ローズやカモミールなどフラワー系の甘めのティーにはレモンの香りのベルベーヌやレモングラスが混ざると丁度いいバランスになるし、マテ茶のようなお茶系の味には、3つのハーブに共通する爽やかな香りのおかげで飲みやすくなる。
この矯味のハーブの効能はどれも消化を助けてくれるのが主な作用なので胃腸ケアとしてデイリーに使いやすいのもポイント。
メインにするハーブを決めたあとに矯味のハーブを足してしてみると、少量で全体の味をまとめてくれる。
自分は何を食べたいか。チョイスし続けることで味の輪郭が見えてくる。
わたしは夫から「今日は何が食べたい?」と聞かれると、たとえば「カレーが食べたい」とはっきり答えられることもあれば「重たくないものがいいかなぁ」「お昼に中華を食べたからそれ以外がいい」または「ぜんぜん思いつかない...」と返すこともある。
ここまでは、よくある普通の夫婦の会話だと思う。
ここから彼はこう続ける。
「本当にそれでいいの?」「本当にそう思ってる?」
正直、「なんでここまで詰めないといけないんだろう?スーパーに行って考えながら食材を選ぶっていうのでいいんじゃないかなぁ」と思っていたのだけれど。
どうもこの会話でてきとうに過ごす時間をなくすことができることに気づきはじめた。
スーパーで食材を選んでいるときも同じで、2択にしぼられた後も、サイドメニューや近日のメニューやどんな風に過ごしたいかなどの話を欠かさず、どちらにするかの会話が最後まで続きながら、今日の献立がつくられていく。
実際、これを続けていくと、だんだん自分の中のぼんやりしていた気持ちに輪郭が見えてくるのだ。
そして、不思議と最終的に「あぁ、今日のベストチョイスはこれだね!」となる。
だから、ハーブティーを選ぶときも、ダイエット中だからデトックス効果のあるものを選ぼうかな?と思った後に、もしその日がメンタル的に疲れているような場合はリラックスできる香りのいいものや安眠できる茶葉を選ぶ。
ライフスタイル全般において何よりも大切なのは、本当に自分がチョイスしたいものは何なのか、繰り返し心とからだの声に耳を傾けること。
自分にとって一番の選択をしたい、と意気込むというよりも、そのときの気分と「違うこと」をしない(違う味にしない)という行動をとっていると今日飲みたい味の輪郭が見えてくるはずだ。
わたしが食卓で「美味しい」と感じた、シンプルな2種類のブレンド
ごはんと一緒にお茶系の味のハーブティーを飲むことが日課の我が家。
気分によってブレンドの数はまちまちで、淹れ慣れていても、からだに取り入れたい効能を多めにチョイスすると、たまに「あれ?」という味に仕上がることもある。
ある日の食卓で、ごはんを美味しく味わえるお茶の味でシンプルなものをと、ダンディライオンを選んだ。
ふと、その後に「今日は仕事疲れもたまっているし、優しいさわやかな風味もほしい」と感じて、すっきり系のベルベーヌを追加。
一口飲んでみると、知っているはずの味にいつもと違った新鮮な感覚を味わい、思わず「美味しい!」と声が出た。
少し足しただけなのに、味がぐんと美味しくなったかんじだった。
日々のチョイスを続けていると、今のからだが欲しているものに合わせて、もう少しだけ美味しいひと手間の味付けができるようになる。
日常的に続けやすい2種類のシンプルなブレンドは、ひと手間がありながらも無理なくつくれる「いつものお茶」になってくれる。
頑張りすぎないけど手を抜かない「美味しい時間」がつくるのは、どんな環境でも整う自分
ハーブには取り入れたくなる効能がたくさんあって、目移りしがちだ。
好きなハーブティーを飲んでいたって飽きてくるし、気分で味付けしたくなるもの。
何が食べたい?どんな味にしようか?そうやって、いつも自分や目の前にいる人とコミュニケーションをとっていると、いまの状態がわかってくる。
だから、「めんどうだなぁ、疲れたなぁ」というときも、難しいことじゃなく、これだったらできるかもっていう、ちょっとだけ味付けするハーブティーの習慣を自由にゆるく続けていると、からだの体調にあわせた味ができるようになって、気づいたら免疫の強いからだがつくれるようになる。
最初はうまくいかなくても、良かったことだけ続けてみる。
味を試しながらレパートリーを増やしていく料理のように、お気に入りや定番の味をもう少しだけ美味しくしたいっていう、そのときの好奇心と欲求を大切にして楽しむだけでいい。
そうやって、大きな決心をしなくても、無理せずに少しギアをいれて今日の気分を混ぜたブレンドを味わう時間をもてば、なにも感じなかった日々が気持ちよくまわりだす。
「いつだって、ちょっとだけ楽しく美味しく」
それが、35歳の今わたしが思う、肩の力を抜いても、からだの内側から安定したキレイな姿でヘルシーな楽しい暮らしが続けられるコツ。
仕事の帰り道、この記事を書いていたら、夫から「今日は心も体も包み込む飲みメニューでいきます」ってメッセージが来た。
わたしは少し笑って、いったいどんなラインナップ??と想像しながら、じゃあ今日はハーブティーの焼酎割をつくろうかなと楽しみに家に帰る。
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。