本場のアイテムが揃わない中で地元の味に近づける工夫をするために必要な2つのこと
故郷の味を再現するには、まずは
イタリアンやフレンチのシェフが本場で修行をしてきた一皿の味が美味しいように料理には味を知ることと判断する舌がまず重要ということである。
これは、モノでも同じで一流品など本当に質のよいものを知らなければ自分が生み出すもののレベルも普通止まりになるのと同じ。
とはいえ、わたしだけでは一人暮らし経験がないまま今の夫と暮らし始めたこともあって、調味料をどう混ぜるとどんな味になるのかがなんとなくしかわからなかったので、一人暮らし経験が長く、料理もやってきて「この味」というものを再現するのが上手い夫に目をつけた。
“シンガポール料理屋に行って味を覚えてもらおう(笑)”
恵比寿の「海南鶏飯(ハイナンジーファン)食堂2」に行き、チキンライスを食べながら、お店にあった簡単なつくり方レシピをチェックするわたしたち。
ここのは少し上品な感じで、たれは地元のように3種類あるが、醤油だれやチリソースの細かい合わせ方などは載っていなかった。
たれは料理には重要で、本場の醤油やチリで決まる味のものがあればいいが、家にあるものでつくる場合、調整する必要がある。
凝視する・・・。
「もっとこんな感じで・・・」という味のイメージも伝えながら、家で再現することに。
あくまでも、専門のスパイスなどを取り寄せたり遠くまで買いに行くようなことはせず、暮らしの中で手に入る調味料を使って、できる範囲で工夫をしてつくれる料理にしたい。
だからこそ、わたしたちはなるべく本場の味に近づけたいものの、カルディなどで手に入るチリソースとジャスミンライスを用意したら、あとは日本のスーパーにある素材、調味料だけでつくるようにした。
わたしたち夫婦がおすすめるハイナンチキンライスの基本レシピ
海南鶏飯食堂のレシピにある基本のつくり方やたくさんの他のレシピをインターネットでググった内容をもとに、何度か挑戦。
(料理長は夫、助手がわたしの構図...。)
毎回美味しくはできたけれど、これまで家でつくってきた中で、いろいろと試しながら模索してたどり着いたのは、なるべくシンプルなつくり方がいいけれど、やっぱり鶏肉はぷりぷりに仕上げたいこと。
日本のシンガポール料理屋でも本場でも店や屋台によっては残念ながら鶏がぱさついている所もある。
そうなっては当然おいしさが半減するので、今回は鶏がぷりぷりになる代わりに鶏だしスープをつくらない(またはスープは別でつくる)前提のつくり方を紹介したいと思う。
材料:(2人分)
鶏もも肉 2枚(通常2人前は1枚のようだが足りないので2枚)
ジャスミンライス 2合(または1.5合)
パクチー 添える分
長ねぎ 青い部分
きゅうり(好みでスライスきゅうりを)
しょうが 少々
にんにく 少々
※たれは以下参照
【つくり方】
1.皮を取った鶏を真空調理
40分~1時間放置する(茹でる)
※真空調理法の詳細は下記を参照
2.鶏油(チーユ)をつくる
1で取った鶏皮を一口サイズに切ってフライパンで弱火~中火で約10分炒める
鶏皮がパリパリになるまで油を出し切る
3.米を炒める
2でつくった鶏油全部に刻んだしょうがとにんにく、ジャスミンライスを加え、米が透明になるまで炒め香りをつけていく
(7~8割透明になったらOK)
※ジャスミンライスは洗わずに
4.米を炊く(鶏は入れない)
炊飯器で通常の白米を炊くように3で炒めた米を炊く
5.たれを3種類つくる
【3種類のたれ】
*どれも大体3・1・1くらいの割合
1.醤油だれ
醤油・オイスターソース・さとうを適量まぜる
2.しょうがだれ
すりおろししょうが少々と(鶏を煮た場合は)煮汁または鶏がらスープ、サラダオイルを適量まぜる
3.チリソース
スイートチリソース(なるべく甘すぎない方が◎)、すりおろしにんにく少々、お酢(穀物酢またはりんご酢)、レモン汁を適量まぜる
茹でた鶏をさましておいてもよく、米を炒めて炊き、タレをつくるというとてもシンプルな行程だからこそ、風味をしっかり出すことを忘れずに。
何度も試してきた中で、外さない味をつくるための我が家のポイントはこの4つ
毎回つくる度にレシピをより美味しく、なるべく工程を減らしてきた中で、それでも押さえておきたいポイントは大きくこちらの4つ。
1.鶏は真空調理法で煮ること
もともとは、鍋ですりおろしにんにくとしょうが、ネギの青い部分を入れて煮ていたのだけれど、その方法だと鶏が部分的にパサつきやすい。
試行錯誤の末、プリプリの触感になる鶏にするために、一番良く簡単だったのが真空調理。
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・鶏肉の皮は、あとで鶏油に使うために全て取っておく
(※皮つきで食べたい場合は、鶏油用に別途、鶏皮を買っておく)
・鶏肉に塩こしょうで軽く下味をつける
ジップロックに鶏とスライスしょうがと青ネギをいれて真空パックにする
・鍋にお湯を沸かし、沸騰後から放置したお湯(沸騰100度から放置して目安80度)に袋ごと入れ、40分~1時間放置をする
※但し、鶏をそのままお湯の中にいれてダシを出す方法ではないため、スープはつくらないことが前提となる調理法。どうしてもスープも飲みたい場合は、鶏ガラスープの素や鶏皮などでできる範囲でダシをとってつくろう。
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2.ちょっと面倒でも「鶏油(チーユ)」をつくること
炒める油を鶏油を使うことで、本場の風味がごはんと一緒に香り高く舞うので、鶏を鶏皮付きで食べたい人でも、鶏油用に鶏皮を別途購入してつくるのがおすすめ。
3.米は必ずインディカ米(タイ米)ではなくジャスミンライス(タイ香り米)を使うこと
ジャスミン米(香り米)とはタイ米(インディカ米)の長粒種のお米で、その中でも最高級品のタイ米として世界で食されているお米。
日本でもササニシキやコシヒカリなどの味・香り・粘りが良いと言われるお米があるのと同じことで、ジャスミン米は香り米と呼ばれる通り、とても香り高い最上級・最高級のタイ米なので、一般のタイ米と比べ、甘味が強く味わいがあるお米として高い評価を受けている。
通常の白米やタイ米だと、独特のアジア料理に合う香り高さがないため、美味しさも半減するので、ぜひジャスミン米を。
4.たれは醤油・しょうが・チリソースの3種類をつくること
ごはんを炊く時間と鶏をゆでる時間はそう大差がないので、その時間をうまく使いつつ我が家ではサイドメニューに生春巻きなどをつくるのが定番だ。
大切な人と料理を通して思い出をシェアする時間
ハイナンチキンライスは「一人じゃ作れなかったから」という理由もあったけれど、今思うと根底では、パートナーの夫には自分の暮らしてきた国のことや料理のことを知ってほしいという気持ちがあったのだと思う。
3種類のたれを混ぜながら食べるチキンライスの味をとても気に入ってくれたときはとてもうれしかったし、自分のルーツになった育ちの国を故郷のようになつかしく思った。
シンガポールでは、共働きが当たり前であまり自炊をしないので、外食が多くホーカーセンターという野外フードコートがたくさんある。
多民族国家ならではの多様性あふれるメニューでマレー料理、インド料理、韓国料理、タイ料理、中華料理、日本料理など、さまざまな料理を楽しむことができる。
マレーシアやインドネシア料理の焼き鳥 サテー
こちらも編集長の好物の一品
こういったチキンライスやフィッシュボール(魚のすり身)ヌードルなどは安くて3ドルから食べることができる国民食で、ホーカーではおじいさんやおばあさんが一人で夕ごはんを食べていたり、三世代大家族が食事していたりと、さながらリビングルームのようにくつろいでいる光景をよく目にする。
夫はシンガポールに行ったことはまだない。
それでも、記憶の中で慣れ親しんでいた料理を共有したことで、まるで自分自身をより知ってもらったような気持ちになり、どうしても食べたいという妻の願望を叶えるためにふたりが納得する味までもっていってくれた味のわかる夫がいたから我が家の定番メニューの大事なレパートリーを増やすことができた。
ビールとアジア料理と会話を楽しみ、食後にすっきり系のペパーミントが入ったハーブティーでティータイム。
ただ美味しいものを囲うだけじゃない、わたしたちらしい味を楽しむ家族団らんの時間が新しく生まれたように思う。
親しい人と料理の記憶を辿って、なつかしい味を再現してみよう
日本国内でもたくさんの故郷の味があり、食べるなら本場が一番だと誰もがわかっているだろう。
それでも故郷の料理は自宅でできることが広がると、周囲の大切な人との時間も深まると、わたしはこの経験から実感している。
それは、みんな「またあの味を食べたいなぁ」と同じ気持ちを根底にもっているけれど事情はそれぞれあり簡単に足を運べないからだ。
わたしは、夫にレシピを助けてもらっただけじゃなく「お母さんたちにもつくってあげたら喜ぶんじゃない?」とアドバイスをもらい、母の日に実家へ帰った際にハイナンチキンライスをつくって両親といっしょに食べる時間も楽しんだ。
お店に食べに行くこともできるけれど、わたしたち家族にとってはチキンライスの思い出イメージはわざわざ遠くに食べに行くものでなく、近場で食べる料理。
食べながら昔の記憶を辿る両親を前に、「親孝行は誰でもできるお金で済ますものではなく、こういうことなんだな」と感じた。
もし、あなたの中に「あのときの味をもう一度!」と駆り立てられる料理があったら、あきらめずに料理慣れをした親しい人と近い味を提供してくれるお店に食べに行ってみることをおすすめする。
そして、調味料を模索して実際に作ってみよう。
それが夫婦なら、いっしょにキッチンに立って作ってみると、自然となつかしい思い出話をシェアする特別な時間にもなる。
もう一つ、このチキンライスは初めて食べた夫も料理として気に入ってしまうくらいアジアの食欲をそそるヘルシーな家庭料理なので、ぜひ、知らなかった人も家族でいっしょに食べてみるとアジアの空気を体感できるはず。
そんな食と人のあたたかさに触れ、心身ともにからだが喜ぶ食卓を感じてみてほしい。
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。