「私、結婚式は インディーズを目指すことにしました。」
こんな発信をしたのは、もう2年前のこと。
これが、夫婦二人でウエディングのことを調べつくして出した結論だった。
わたしたちが入籍をしたのは2016年11月。
翌年、2017年6月に家族挙式を挙げ、スケジュールの関係で9月に友人向けパーティーをした。
もともと、夫は結婚式に興味をもっていなかったし、わたし自身もウエディングへのこだわりは特になかった中で、悩んだ結果、楽しみにしてくれていた家族や友人への感謝と報告をかねて挙式を挙げることに決めた。
すべてを自分たちでやることにしたこの経験は、あまりにも濃い内容で、書き出すまでにずいぶんと月日が流れてしまったけれど、今だからこそ俯瞰して振り返れる視点で手づくりウエディングの内容をひも解いていきたいと思う。
これから挙式を挙げようと検討中で、今進んでいる方向にどこか違和感や疑問を感じていたら、枠にとどまらず、改めて自分たち夫婦の在り方について立ち止まって考えてみてほしい。
大切なことを守るために「空の箱を借りて、自分たちでやらないか?」と夫が言い出した。
挙式をすることに決めてから、ウエディング雑誌やインターネットで挙式会場などの情報を集めはじめたけれど、なかなか自分たちに合うものを見つけられずにいるという人は多いのではないだろうか?
わたしたちは、親戚までは呼ばない家族挙式に決めていたので、人数が14名しかいない少人数。
でも、どこも多人数を相手にしたものばかりで、「少人数挙式」と謳っているプランでも20~30人規模。
知人の紹介で見に行った挙式会場も、「1日2組限定」を売りに決まりきった内容、ルールに縛られた説明が続き、持ち込み料こそなかったものの、見積も納得ができる内容ではなかった。
その後、オーダーメイドウエディングを行なっている所へ複数問い合わせをしてみたけれど、母体が東京でなく出張してもらえるタイプではなかったり、多人数での挙式を求める人を対象にしていて通常のウエディング業者と同じ高額プランと変わらなかった。
紹介で一度お会いしたフリーのウエディングプランナーの方も、個人活動なので小回りは利くものの、高額なプロデュース料の内訳の説明には新郎新婦主体というより、プランナーのこだわりに聞こえる言葉が並ぶ....。
さらに、WEB上のウエディングにまつわる情報の検索結果は大きな業者たちに支配され、ほんとうにほしい情報が見つからない。
....ここからどうすればいい?という先が見えない中にいたときに、夫からこんな提案があった。
「一つ案がある。通常ギャラリーとして展示に使う箱を数日間借りて、自分たちでつくるっていうのは?
ギャラリーを借りる??わたしは、今までの選択肢とまったく違う方向性に一瞬おどろいた。
彼は、こう続ける。
「譲れないことを実現するために必要なものだけをチョイスするなら、大変でも事前に作り込めるのがメリットだし、好きなようにできて楽しそうじゃない?
それに、他人に任せることで、前に挙式の参列をしたときのような、式場スタッフが名前を間違えて呼んだり、清掃が行き届いていなかったり、何も考えずにamazing graceの曲を流すような信頼できない結婚式場に世話にはなりたくない。」
夫婦でいっしょに参列した式で、カタカナで書かれた苗字の「ク」と「ワ」を読み違えているスタッフがいたり、床が汚れていたりしたときのことだ。
amazing graceは黒人霊歌。
有名な曲だからと最近結婚式でよく使われるようだが、大安のお日柄は気にするのにそういった歴史的背景を考えず、それを祝いの席の挙式で使うことは、たとえ新郎新婦が無知だったとしても式場側の知識が問われる。
音楽関係者がほかに一人でもいたら、お葬式の曲を流されて怒らない人はいないと、ミュージシャンの夫は式中にとても怒りを示していたけれど、二人のためにぐっとこらえていた。
他人に任せるというのは、そういうリスクがともなう。
わたしたちが自分たちの挙式で守りたかったものは、家族と自分たちの想いだ。
家族みんながゆっくりできて、それぞれが濃い時間が過ごせること。
「永く大切にしたい人やモノ」にこだわること。
これに反するものが一つでも入り当日を気持ちよく迎えられなければ、式をする意味がないのだから。
わたしは、最初に感じた感覚「なんか、おもしろそう...!」という直感を信じ、二人で準備をする濃い文化祭のような提案を受け入れることにした。
未知で大変なことはわかっていたけれど、おもしろそうと思うことには必ず理由があり、その直感に従って行動すると何かが起きることが彼と出会ってからの出来事で実感していたらからだと思う。
それが、わたしたちの「手作り挙式」のはじまり。
本来、結婚式は他人にご祝儀で何百万もお金を払って手に入れるものではない
ある知人の男性に「これまで一番お金をつかった経験は?」と聞いたときのこと。
その方は少し顔を曇らせ、一つに「結婚式だ」と答えた。
「昔は、高額でもまだATMでおろせた時代で。起業して数年、まだ大変だった頃も含めて本当に苦労したときに貯めたお金だった。
だから、お金を引き出して運ぶときは誰かに取られないかこわかったし(笑)
そのお金を納得していないものが含まれたものに使うというのが...。今でもあのお金の使い方はよかったと思ってない。」
この言葉がずっと頭に引っかかっていた。
業者という他人から結婚式の価値を決められるようなものではないし、何百万とお金をかければ自分たちにとっての「特別」が手に入るわけではない。
結婚式は本質的には、芸術やアミューズメントのようにイベント化するものではないというのが、わたしたち夫婦の意見だった。
日本では冠婚葬祭の中の「結婚式」というカテゴリーがバブルで かなりお金が動き、大きなイベントにしすぎてしまっているが、本来、お金をそこまでかけることが普通ではないと思っていたから。
挙式のような家族間の行事は、パーティー感ばかりを追求するのではなく、これから一緒に生きていく自分たちにとって大切なことが胸にじんわり来るものだ。
だから、その「じんわり」は本人主導でないと手に入らない。
結婚の挨拶に行ったり、家族で集まって食事をしたりする家族の中での会は、仮に簡単に過ぎ去ってしまうような小さなひとときでも、一生のうちでは重要なイベント。
結婚式の主催が結婚式場やウエディング会社側になく、主催が新郎新婦個人なので、その主導権に合った内容でないと成り立たない。
協力は必要でも、他人に頼らなければ、お金をかけなければ何もできない自分にはならないこと。
たくさん試行錯誤して、苦労して、自分たちの「じんわり」を特別なこととして捉えて、思い出をつくることへの未来に向けて投資することのほうが何倍も大切なことだ。
目に届く日本の結婚式は全部メジャーデビューばかりだった
冠婚葬祭は、情にかかわる世界なので本質的に「集客」や「人への売り物」という考えとは立ち位置が異なる。
だからこそ、ほかの業界と同じような客層として扱ってしまうことで間違った見方になってしまうことが多いように思う。
相場といわれるご祝儀3万円、結婚式数百万円、当然のごとくお金を湯水のように使う文化になっている結婚式のプランに対して、よく聞く「ぼったくりだ」という声。
日本のウエディング市場が、競合して経済が動くような納得できる値段に落ちついていないのは、まだまだほとんどが一部に儲けが集中するシステムにしかなっていないところにあるのだろう。
一般的に大多数から得る単位といえる大きな収益を、個人一人に対して値段を吊り上げる高額販売の仕方をしている古い体裁には、もう売る側も買う側もほとんどの人が気づいているはずなのに...だ。
結局、「商品」として消費税を含めた見積に対して、ほとんどの人が消費税とも関係ないカンパ金でしかないご祝儀でまかなって式を挙げている現状になっている事実が、個人が支払う莫大な料金設定としておかしいことを物語っていると思う。
特にウエディングの見積の中で一番不透明さが出がちなのが「プロデュース料」だろう。
「何をしてくれる内訳なのか?」質問をしても、しっかり答えられない業者がとても多かった。
式場の中でなるべく新郎新婦のやりたいように、手を変え、品を変えるという、個々に少しアレンジして形を変える程度はあくまでも相談料でプロデュースではない。
わたしたちが見学をした挙式会場にいたプランナーによるプロデュース料は10万円。
そこでは知人からの紹介になっていたので、「紹介の方は特別にプロデュース料は0円」と伝えられた。
キャンペーンでもなく紹介で0円となった所に加え、チャペル施設料とその他施設使用料と分かれている見積の中身を問うと料金設定のちゃんとした説明が返ってこず、半額にするという回答をされたのだ。
インターネット上のウエディングプランも「最大で100万円オフ」「半額」など誇大に謳っているものを多く見かける。
じゃあ、ちゃんと自信をもって商品を出し、それくらいの儲けが必要だと謳っている中で100万円を引く勇気があるのか?と問われたら、なんという答えが返ってくるのだろう。
一方で、とあるオーダーメイドウエディング会社では何もないところから作り上げるという意味ではプロデュースではあったものの、問い合わせると100万円以上の高額な最低料金の設定があり、そのうちの50万円程がプロデュース料で、多人数で行う式でないと成立しない内容。
個人で活動をしているウエディングプランナーの方からは、プロデュース料30万円の内訳として、24時間問い合わせに対応するといった体制や様々な手配代行をするという中身以外に自信をもったプロデュース内容が語られることはなかった。
蓋をあけてみて、今回わたしたちが目にした「結婚式」と謳っているウエディング会社たちはメジャーデビューなのだと感じた。
それと逆行するように、世の中のカップルの多くが結婚式の概念が昔とはまったく変わってきていて、式を挙げない人も多いし、記念撮影だけにする人、レストランでの会食にする人、自分たちで手作りをする人など多種多様。
世の中の流れに逆らってジャンルを超えた自由化の流れを止めているように見える現状は、今の時代とあまりにもギャップがある....。
メジャーレーベルが根付いた世界でオリジナリティを求めた内容かどうかの違いというのは、お金をたくさん出して人をたくさん呼んでイベントをやりたい人のニーズに合うもの。
到底15名弱の人数の挙式で行うものではなく、自分たちの方向性に沿わない現実を知る。
思い描いたことがやれない、この現実感というさみしさに、「残念だね。」と悲しそうに言った夫の言葉が深く胸に突き刺さった。
型をとっぱらって自分たちのスタイルで作ったウエディング
挙式場のパッケージは個人にあわせてつくられたものではないので、つい「これはいらない」「あれもいらない」と文句だけを言いがちになるけれど、まず必要なのは、そういった消去法の考えの前に、「自分たちにとって何がいるのか?」を考えることだ。
一般的には、これを導いていくのがウエディングプランナーの役目。
でも、逆に言えば、この答えを自分たちだけで出せたのなら、人に頼まなくてもできてしまう。
実はわたしたちは、信頼できる業者やプランナーなどが見つからないうちに、どんな挙式をしたいのか?という問いへのお互いぼんやりとしていたイメージが、会話を繰り返ししていく中でクリアになっていった。
それはモノを大切に「手作り」をすること。
夫は、「いらないものが入っていたらお互い嫌だし、式ではなるべくそういうのが一つもないようにしたいよね」と話していた。
「ああ、自分たちは通常の決まった形式はとらずに一から自分たちで作っちゃうことをイメージしているんだ。」
使った植物、お花を捨てたり使い回しされたくない。
モノも永く使いたい。
人間関係も深いものだけを。
そんな想いに気づいてから、決めたコンセプトは「永く大切にしたいもの」。
これから永くともにしていこうという日に使い捨てのものでうめつくされた内容をチョイスすることがナンセンスだと感じていたわたしたちには、豪華な会場を見学しても、そこには血が通っていない空気がして、空っぽのがらんどうの場所のように見えてしまっていた。
そして、選んだのは、通常は挙式などでは使うような場所ではない個展用のギャラリー。
会食会場のレストランはお気に入りの店に決めていたので、そこを拠点に移動できるエリアにした。
「永く大切にしたいもの」として“手作り”をテーマにコンセプトからずれる内容はないように徹底して企画をしていく決意をしてつくった手作り挙式。
【衣装】
ドレスはオーダーで、友人向けパーティーでも使い、その後リメイクをして普段の正装で着れるようにする。タキシードもオーダーで仕事のライブでも着れるデザインに。
【ブーケ】
作り方を習い、ブーケや会場装飾を生花手配をし手作りする。
【人前式で使うもの】
結婚証明書、ウェルカムボード、祭壇にかわる台をDIYで作る。
【ジュエリー】
ウエディングで身に着けるジュエリーはオーダーで一生使う買い物に。
【ヘアメイク・カメラマン】
信頼できる知人。
【引き出物】
家族それぞれに合うもの、両親への贈り物は手作り。
【音楽】
挙式で使う入場曲はトランぺッターの夫の演奏による録音。その他BGM選定。
【映像】
式をつくるために関わってくれた人々のドキュメントムービー作り。
【招待状】
招待状もできる部分は手作りをする。
会場は3部屋続くギャラリーで作り込みをすることに。
1部屋目で家族への感謝を伝える「思い出の写真のギャラリー」
3部屋目が「人前式の部屋」
エントランスから3部屋目までのストーリーに合うように設営をして、作り込みは前日ギリギリまで続いた...。
式が終わったあとレストランへ移動し会食をしたときに、海外転勤の多かった父からこんな言葉があった。
「海外生活が長く、恥ずかしながら子供たちのことをちゃんと見てあげることができなかったことを自分なりに反省している。
正直、自分の娘がここまでのことをやり遂げる力があることに驚いた。」
わたし自身も最後までできるとは思っていなかったけれど、家族みんなが式中も笑顔で、この個性的な会を受け入れてくれていたことで成り立った挙式だったと思う。
これまでの感謝を伝えることを重視した気持ちは、どんなに立派な内容でなくても十分に伝わるものなのだと肌で感じれた時間。
翌日は、またギャラリーへ行き、撤収作業...!
ようやくおわった手作り挙式に安堵。
「イベント」である型を取っ払えば、どんなスタイルでもウエディングはつくれる。
このときのことは、人生の中でこれ以上はないくらいに体力を使い、感情が大きく動いた経験として自分自身の中に生きている。
手作りウエディングで手に入れたのは、どんなときも夫婦で乗り越える力
一からすべてを作るという作業は大変すぎて何度も壁にぶつかり、何度も「もうだめかもしれない」とくじけそうになった。
だって、新婦が当日までにコンディションを整えて挙式の準備をする、という意味ではこのやり方は明らかに向いていないでしょう?(笑)
だから、すべてがおすすめできるわけではない。
でも、ものづくりをするクリエイティブな時間を通して、何よりも身近な人との深い関係を築く人間力を磨くことができたように思う。
自分たちで何から何までトライをすると、ひとりではできないことも二人ならできることがわかる。
そして、必ず周囲の支えが必要になるので、信頼できるチームなら乗り越えられるということを実感する。
ウエディングにまつわるものの手配が細かく、とても大変なことも理解できる。
上手くできなかったこと、こうすればもっとよかったことなどはたくさんあるけれど、やらなければよかったことはない。
目的は結婚式でも、結婚でもない。
「心が動く」ものを重視して、いっしょに暮らしをつくっていくと、その目線の先には、一人だけで見ていた景色とはまったく違う世界があるものだ。
胸が熱くなる新しい体験を重ねることで、自分たち夫婦の生きていく力をつかんで行くことができる。
お互いに一歩を踏み出す、チャレンジをする力が鍛えられる経験をいっしょにしていくことそのものが何にも代えられない価値になってくれるのだから。
ふたりの意志で納得した道を選び、自分たちなりのインディーズ力を高めることを楽しみながら、これからの記憶に残る時間を刻んでいってほしい。
あなたは「どんなウエディングの1日を迎え、どんな風にふたりで生きていきたい?」
Other Wedding Story
Weddin Party
友人向けウエディングパーティーを開催した時のレポートです。
ゲストの人生に寄り添い「想いをつなぐ」ウエディングパーティーとは?
Restaurant
今回の家族挙式後に会食で利用したレストランはこちらの記事で紹介しています。
▶︎「パスタ好きの夫婦におすすめしたい千駄木にあるイタリアンNOBIの一歩上をいく味と真心」
Jewelry
着用したウエディングのピアスについてはこちらより。
▶︎ 挙式目前にオーダーメイドジュエリーを作ることにした“たった一つ”の理由
Self care
挙式前の体調管理に向けて、おすすめしたい家でできるハーブ美容のセルフケア。
▶︎ 挙式前の花嫁編~ヘルシーな結婚式と夫婦生活に向けた1ヶ月毎の仕込みハーブティー3ステップ
Our Style
手作りする暮らしに合う家具たちをFurniture Galleryにて掲載しています。
温かみのあるものを大切にする世界を、ぜひ覗いてみてください。
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。