あなたには20年通える特別な花屋はありますか?
お花を初めて買ったのは住んでいる街のお花屋さんだった。
という人は多いでしょう。
昔、オシャレとはいえない商店街の花屋のおじさんが、小中学校の式典で使う校長先生の隣にあった花をいつも生けてたのを見たことがあります。
店番のときは、ただの花屋のおじさんなのに・・・。放課後の体育館の掃除中、花を担ぎ出しおもむろに舞台へ上がり、花をぐいぐい生けていく姿が妙に味があって。
なんとも斬新でドラマチックだった。
手仕事をライブで見て体感することって、
すごく人の記憶に残るんだなぁと感じた経験。
でも、そのお店も含め街のお花屋さんは
ほとんどなくなってしまいました。
ずっと通いたいと思えるお店は、その場で感じる「ワクワクする体験」を重視しているのがわかります。
今日ご紹介するのは、商店街でずっとなくならず、私が20年以上通う「いつも見たことのない植物を置いて一歩先の景色を見せてくれる」お花屋さんの物語。
子供の頃ワクワクした世界を大人になっても感じられる空間
私には小学生の頃から通っているお花屋さんがあります。
それは以前に暮らしていた街、小田急線 梅ヶ丘にあるHANACHOさんです。
遡ると、20年程前の小学5年生の頃。
商店街に一つだけあった他とは違うオシャレなお花屋さんで、個性豊かな植物とオリジナルのポット&什器を置いていました。
植物は産地から厳選し、他では見ない希少な植物を数多く取り揃えていて、その空間は見たことのない世界。
子供の自分には急に別空間に入ったような場所でした。
途中から拡張した隣接ブースには、多肉やサボテン・珍しい植物コーナーがあり、異空間への誘いをうけてしまうこちら。
俳優の滝藤賢一さんもこちらのマニアックな植物に魅せられて、よく購入されていると聞きます。
▶滝藤賢一の自己投資。“時“の概念を教えてくれる「植物」
小学生の頃は2階が大のお気に入りで、階段を上がっていくのがいつも楽しみでした。
どんなに長居しても自由に見させてくれていて。
大人になってから、色々なお花屋さんにお世話になってはいますが、このお店の2階に通っていた子供の頃の夢中になった取るに足らない時間は鮮明に記憶に残っているんですよね。
驚くのは、今またここに来ても、あの頃の感覚だけでなく、新しいモノを見た時のワクワクする感覚を感じさせてくれることです。
お花屋さんは街で簡単にできるオーダーメイド
当たり前すぎて、意識したこともないかもしれませんが、お花屋さんは街で簡単にオーダーメイドの花束が作れちゃうお店ですよね。
でも、ただ花をまとめてもらえればいいのかといったら、そんなことはない。
「オーダーメイド」なら、そこに贈る側のこだわりとそれを上手く表現するための作り手のエッセンスが必要になり、オリジナリティが求められる。
私がここでブーケを頼もうとした時、自分が綺麗だなという好奇心、相手の好きな色、香り、種類、こだわりのイメージを考えてから頼むと、お店の方が、どんな目的でどんな年齢層、どんな好みの方へのプレゼントなのかを追加で聞いてくれました。
明るい友人の雰囲気とお見舞いのお花ということもあり、元気が出るように後から沢山花開く蕾をつけた季節の花を色々チョイスしてくれました。
こうやって、バラバラだったものを新たな形にして作り上げていくというのは明らかに機械ではできないオリジナリティが作られていきます。
そのためには、お花屋さんの前にまずは自分。
贈りものとして買うなら、相手を本当に喜ばせたいというこだわりを伝えれば、プロ側からの提案も入って、思った以上のオーダーメイド品が出来上がるんですよね。
花屋に通う理由は単なるセンスの良さだけが決め手ではない
お花を買う時に、お花屋さんにセンスが良い花の仕入れやアレンジを求めるのは正直当たり前。
でも、綺麗でセンスがいいっていうのと、顧客が本当に求めているものを提供できるセンスを持っているかはぜんぜん話が違う。
たとえば、お花屋さんでの嬉しかった経験ってどんなことがあるでしょうか?
・閉店時間を過ぎ、植物の片付けをしている時、母の日に花がほしくて駆け込んで、手を止めてカーネーションを包んでくれて「もう終わりだから」と余分にサービスしてくれたこと。
・子供の頃、何も買わずとも、緑の多い店内で好きなだけ森林浴させてくれて、お金が足りなかったけど一輪花をくれたこと。
・おばあちゃんに鉢植えを買う時、おばあちゃんでも簡単な手入れの仕方を丁寧に教えてくれたこと。
これは実際に私が20年以上通っている花屋 HANACHOさんで感じたことです。
小さいことですが、どの内容も顧客が求めている以上の思いやりを花と一緒に届けてくれている。
芸術をひけらかす技量だけあっても、顧客は喜びません。
もう一歩やろうとする姿勢が求めている以上のものを提供できるセンスにつながり、人の記憶に残っていき、20年、30年と通おうと思える特別な場所になっていきます。
20年通いたい花屋は一歩先のスタイルを追求している
HANACHOさんは、2006年からexotics plantsブランドを立ち上げ、ただ空間に植物を配置するだけでなく、その空間を使用する人のライフスタイルにまで配慮することをモットーに、植物と人との関わりをトータルで提案することをスタートされたそう。
流行には乗らず我が道を行き、植物への愛情と人の暮らしへのこだわり。
ここに足を踏み入れるとわかるのは、「見たことのない景色をこの目で見たい」と思っていることがベースにあって、顧客にもその景色を見せてくれる空間作りにつながっているということ。
だって、私みたいに小学5年生の頃から30代を越えて大人になっても記憶に残る時間ってすごいことですから。
20年以上前から、ライフスタイルにどう配慮するかを考え続けてきている姿は、ブランドという形として立ちあがる前から、幼い私にもしっかり伝わっていました。
花を受け取った後、自由に楽しむ時間を考える
20年、お花屋さんにお世話になってきた中で感じたのは、お花を贈るのは「花を通じて人の想いを伝えること」が目的だけど、その後の余韻までを想像した贈りものとして考えないと相手にはちゃんと伝わらないということです。
花や植物は生きているので、綺麗に作られた形を眺めて終わりじゃない。
蕾が花開いたり、時間が経つと色が変わったり、贈った後も香りや新たな形を楽しめるもの。
生きている色を楽しんだ後は、ドライフラワーとして残していくこともできる。
そうやって、花は枯れても、良くも悪くも、存在感を与えてくれます。
枯れかけでも、しおれても、朽ち果てても風情があって。
花は花として存在するすべての時間が美しいことを教えてくれる。
そんな美しさを理解して、どうやって贈り物を作っていくかを考えること。
日常に花を添えるために、大切な人との暮らしをイメージすること。
自分自身が経験して、それをからだに入れて、見たことのないものを追い求めて、たまに失敗したりしながら、またその次を考える。
これは、お花屋さん側にも私たち買う側にも言えることですが、普段からモノへの愛情や一歩先を考える姿勢がなければ、その先の暮らしの提案は絶対出てこないということです。
どうやったら長持ちするか?こんな好みの人にはどんな色が合うか?
あの品種はいつ入荷する?
こんなリビングに飾りたいけど、こんな悩みがあって・・・。
そんな風に、お花屋さんと相談して一つ一つ選んでいく時間を楽しみましょう。
大切な人の暮らす空間のために考えることを意識して、植物を選んでみてください。
他にはないちょっと違う景色と共に、いつまでもワクワク感を届けてくれるお花屋さん。
だから、私は20年以上経った今も母の日にはいつものお花屋さんで花を買って、親の顔を見に帰っています。
【HANACHO UMEGAOKA】
小田急線 梅ヶ丘駅より徒歩3分
東京都世田谷区梅丘1-14-6
tel:03-3428-8125
営業時間 9:00~20:00
年中無休(正月5日間除く)
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。