でも、イメージしている扉とアイアン付きのテレビ台はDIY初心者にはハードルが高かったので、すぐに手をつけずにいた....。
住まいはいちばん長い時間を過ごす場所。ふたりがほしいものを模索しよう。
家族で共通の生活品などを購入するとき、妻の好みで選んだインテリアだったり、こどもが好きな味のデミグラスソースだったり、誰かひとりの好みに寄せることはよくある話だと思う。
「奥さんの意見が一番なので、カーテンなど部屋の色みは彼女に任せてるんだ」
「子供が甘口なので、大きくなるまでカレーは甘口にしているんだよね」
「わたしはナチュラルな木目調がすきなんだけど、夫の意見でシックでモダンな家具、黒の棚を選んだの...」
こうやって、いっしょに使うものに対して片方がこだわりがないとか妥協した選び方をしてしまうと、お互いにとっての居心地の良さではなく、相手にとっての居心地の良い場所=「相手が喜んでいるなら自分も心地よい」と頭では解釈されていく。
本人はあまり気づいていないかもしれないが、人とのコミュニケーションが気持ちよくても本来の自分が好きな場所のイメージとは違う。
住まいは人生でいちばん長い時間を過ごす場所。
生きている間に8~9割は建物の中で過ごしているので、その空間に自分たちがどうやって関わっていくのかが大事なのだ。
仕事が忙しく寝るためだけに帰る人もいるけれど、そういった場合は固定された住まいをもたずに動いている人が多い。
家で過ごすことが多いあなたに目を向けてほしいのは、暮らしはそこに住まう大切な人といっしょにつくっていくものだということ。
「こっちの方がいいでしょ」というフットワークの軽さ
国土も広くDIY文化が受け継がれているアメリカとは違い、日本では何かしようと思った時には、用意されたものを買わなくちゃいけないシーンが多い。
最近は、簡単につくれる便利な道具も増えているが、作業場の問題もあり、最初の一歩のハードルが高いと感じるのではないだろうか。
わたしたちも、庭付きの賃貸の戸建て物件を見つけなければ今ほどのスパンではたくさんの家具を作れなかったと思う。
ただ、実は最初につくったのは今の家に引っ越す前で、家の中でできるスピーカースタンド。
家がだめでも、ホームセンターや最近ではDIY用の工房なども増えている。
大事なのは、小難しい精神論ではない、単に「いやいや、こっちの方がいいでしょ」という感覚をもつことだと思う。
普段使う身近なものから、自分たちが「こっちのほうがカッコいい」という感覚で選ぶ。フットワークを軽く、小さいものからやってみる。
自分たちで暮らしを組み立て始めるとそれ自体が楽しくなって、暮らしそのものがどんどんエンターテイメントになっていくものだ。
映画と中古レコードを楽しむだけじゃない。暮らしかたを作っていくふたりのスタイル。
テレビ台をつくったら、映画とレコードをもっと楽しみたいと思っていた気持ちがわいてきたのはなぜだろう。
それは、視覚的な要素が大きい。
特に気に入っていない場所であえて長時間、集中して入り込む映画を観る気が起きないからだ。
新しいテレビ台ができてからは、60インチのテレビに買い替え、映画をHuluで調べてみたり、amazonプライムビデオと接続。夫が休日にむけて率先して気になる映画をお気に入りにストックしていった。
そして、レコードプレーヤーはゆくゆく針を交換できるものにして、届くと同時にわたしたちは、中古レコードを求めて、吉祥寺のディスクユニオンへ。
特にジャズに詳しい夫は、高額なプレミア付きの有名な音源は仕事でさんざん聴いているため、逆に「こんなアレンジは知らなかった」「聴いたことのないライブ録音」という掘り出し物の1枚400円程度のレコードを買い込む。
その方が自分たちにしっくり来ていた。
そこに詰まっていた音は、何十年前のライブ収録のものなど、今までCDのライブ収録では耳に届いていなかった雑音など空間の音。
1950年代のものも目をつむれば、ほんとうにその会場にいるみたいで、まるで25歳の若さで亡くなった偉人と会えているような感覚になる。
夫婦でランチを食べながら、料理をしながら、夜な夜なまったりと...いろいろなシチュエーションで楽しむ。
そんな新しい時間から見えてきたのは、自然と暮らしかたそのものをDIYしていること。
休みの前の日は映画を観ながら美味しいおつまみをつくってみよう!と意気込むことも多いし、新しいBGMを聴きながら気分でハーブブレンドの調合をしてみたり。
家も、食べものも、娯楽も、仕事も。
与えられた選択肢の中で消費するという姿勢とはどうも違う。
むしろ気に入るものがなければつくるスタンスなのは、若い頃から音楽の世界でハングリーに生きてきた夫とシンガポール育ちでなかなか日本社会に溶け込めなかった妻のわたし、それぞれが、世の中の理不尽でうんざりするようなことに意見を持ちつづけてきたからだろうか。
そんな原動力からか、なおさら自分たちは、美味しく、楽しく、カッコよく、フェアで、もっとハッピーに暮らすんだ、ということに人よりも少し貪欲なのかもしれない。
「自分たちらしい生き方」を楽しむヒントはクリエイティブな毎日の中にある
たくさんの家具を作ってきたとはいえ、もちろん気に入った既製品を買うこともあるし、プロに頼むことを否定しているわけではない。
それでも、やりたいと思ったことを自分でやれるようになったほうがいいと思うのは、自分でやるようになると、プロのすごさやモノの仕組みも理解できるので、いいものとそうでないものの見分けがつくようになる、という点だ。
勘のいい人なら、これは家具に限ることじゃないとわかるはず。
基礎知識があった上でプロに頼むのと、まったく知らずにわからないから丸投げすることは、まったく意味が違うからである。
小さいものでも自分たちでつくってみると、「どんな風にしたいか」を試行錯誤しはじめるので、自分らしさが滲み出てくる。
いいと思うことを形にすることがその先の未来につながる
今のものを買い替えたくて家具を探しているけれど、なかなかいいものが見つからない...。
竹内 亜希子 Akiko Takeuchi
-植物療法士(フィトセラピスト)
-女性の健康経営推進員
-健康経営エキスパートアドバイザー
幼少より10年間シンガポールで暮らす。
帰国後、会社員として働く中で余白時間を奪われる社会の渦に揉まれ、20代半ばに坐骨神経痛を一年患い、根本改善のためにストレスケアにフォーカス。食生活改善と植物療法を実践し、3ヶ月で完治。
植物療法士として、働く世代の女性の心身のセルフケア、ストレスやホルモンバランスの体の変化をコントロールできる体質づくりを指導。
オリジナルハーブティーブレンド 販売、カフェ等の店舗向けオリジナルハーブティー商品企画・提供、大切な人とのヘルシーな時間を追求するカルチャーメディア『Documentary Gift 』を運営。
現在は、ヘルスケア企業にて、健康保険組合や企業に向けた生活習慣改善プログラムの提供・運営や健康経営推進、中でも女性の健康づくりに注力。
働く女性にとっての「からだにいい生き方」や予防のための「セルフケア」を継続する暮らしのつくり方を伝えている。
趣味:日々の楽しみは、心打つライブと毎日調合するハーブティー、そして家族と食卓を囲う時間。